介護や支援が必要な状態になると、杖や車イス、また介護ベッドなどの介護用品(福祉用具)が必要になってきます。
これらの介護用品は高額なものも多く、誰でもそう簡単に購入できるものでもありません。
またそれほど高くはないものでも、介護用品は体の状態に合わせて必要な用品も変化していきます。
その都度状態の進行に合わせて購入していると何度も買いなおさなければなりません。
ですので基本的にはこういった介護用品は購入よりもレンタルで揃えていきます。
この際のレンタル費用に対し、介護保険を利用し自己負担額を軽減することができます。
このサービスを「福祉用具貸与」といいます。
また衛生上などの問題などでレンタルできない用品については購入することになりますが、この購入費用にも「特定福祉用具販売」というサービスが適応になり、自己負担額の軽減ができます。
ここではこの2つのサービスについて、その内容や利用方法などを詳しく紹介します。
介護用品のレンタルは「福祉用具貸与」、購入は「特定福祉用具販売」というサービスになります。
まずは「福祉用具貸与」について解説します。
「福祉用具貸与」とは、介護用品(福祉用具)をレンタルする時に、そのレンタル費用を介護保険で補助してくれるサービスです。
ただし介護用品(福祉用具)ならどんなものでも対象になるというわけではなく、その品目は以下の13種類に限られています。
これは、介護保険制度における福祉用具の範囲の考え方の基づき決められたものです。
【補足】介護保険制度における福祉用具の範囲
となっており、この考え方で上記の13種が設定されています。
[※出典 介護保険における福祉用具‐厚生労働省資料]
「福祉用具貸与」を利用できるのは要支援1以上の方です。
要介護認定を受けていない人や自立状態という判定結果の場合は対象外です。
「福祉用具貸与」でのレンタル料の自己負担額は1割(所得によっては2割)です。
例えば月額のレンタル料が5,000円の車いすを借りている場合は、4,500円が介護保険から支払われ、500円が自己負担になります。
この費用は月額の介護保険利用限度額に含まれます。
他の訪問介護や通所介護のサービスなどを受けている場合は、全ての利用額が限度内でなければ超過分は全額自己負担になります。
※利用限度額は要介護度によって異なります。
詳しくはこちらで解説しています。
→ 要介護度と支給限度額
介護用品?福祉用具?
何度かここでも介護用品、福祉道具という表現が出てきますが、一度この名称について整理しておきましょう。
厳密には、介護者が介護のために使う場合は「介護用品」。
要介護者が自分自身の自助のために使う補助器具を福祉用具と呼ぶようです。
この2つは同じように使われることが多く、あまり区別されていないケースの方が多いのですが、原則的には覚えておくといいと思います。
こちらのページでもそれほど便宜上それほど区別はせず、「介護用品」という言葉の方をメインで使わせていただきます。
それでは実際には対象になる介護用品について詳しく見ていきましょう。
福祉用具貸与でレンタルできる介護用品は13種類ですが、要介護度によってレンタルできる用具が変わります。
用具名 |
対象者 |
機能 |
月額レンタル料目安 |
---|---|---|---|
車いす |
要介護2〜 | 自走用標準型車いす、普通型電動車いす、介助用標準型車いす |
5,000円〜 |
車いす付属品 |
要介護2〜 |
クッション、電動補助装置等であって、車いすと一体的に使用されるもの |
2,000円〜 |
特殊寝台(介護ベッド) |
要介護2〜 |
サイドレールが取り付けてあるもの、又は取り付け可能なものであって、次のいずれかの機能を有するもの。 |
8,000円〜 |
特殊寝台付属品 |
要介護2〜 |
マットレス、サイドレール等であって、特殊寝台と一体的に使用されるもの
サイドレール、マットレス、ベッド用手すり、電動ベッド用テーブル、スライディングボード、スライディングマット、介助用ベルトなど |
500円〜 |
床ずれ防止用具 |
要介護2〜 |
次のいずれかに該当するものに限る。 |
3,000円〜 |
体位変換器 |
要介護2〜 | 空気パッド等を身体の下に挿入することにより、居宅要介護者等の体位を容易に変換できる機能を有するものに限り、体位の保持のみを目的とするものを除く |
500円〜 |
手すり |
要支援1〜 |
取付けに際し工事を伴わないもの |
2,000円〜 |
スロープ |
要支援1〜 | 段差解消のためのものであって、取付けに際し工事を伴わないもの |
3,000円〜 |
歩行器 |
要支援1〜 |
歩行が困難な者の歩行機能を補う機能を有し、移動時に体重を支える構造を有するものであって、次のいずれかに該当するものに限る。 |
1,000円〜 |
歩行補助つえ |
要支援1〜 | 松葉づえ、カナディアン・クラッチ、ロフストランド・クラッチ、プラットホーム・クラッチ及び多点杖に限る |
1,000円〜 |
認知症老人徘徊感知機器 |
要介護2〜 | 認知症老人が屋外へ出ようとした時等、センサーにより感知し、家族、隣人等へ通報するもの。 |
8,000円〜 |
移動用リフト(つり具の部分を除く) |
要介護2〜 |
床走行式、固定式又は据置式。 |
10,000円〜 |
自動排泄処理装置 |
要介護2〜(排便機能を有するもの)
それ以外は要支援1〜 |
尿又は便が自動的に吸引されるもの |
10,000円〜 |
と以上のようになっています。
月額レンタル料の目安の金額を掲載していますが、商品によって金額の差も大きいので最低ラインの目安としてみておくといいでしょう。
また要介護度によって借りられる用具が変わってきていますが、例外的に要介護度では対象外の場合でもレンタルが可能になる場合があります。
それには、
「医師の意見(医学的な所見)」に基づき判断され、サービス担当者会議等を経た適切なケアマネジメント結果を踏まえていることを市町村が「確認」していること。
という条件があります。
具体的に例を挙げると、
などです。
「例外給付」を利用する場合は、ケアマネジャーに相談し、市区町村に届け出を行います。
介護保険を使った福祉用具貸与サービスを受ける場合には、都道府県または市区町村の指定を受けた「福祉用具貸与事業者」で用具を借りる必要があります。
指定を受けていない業者で借りたものは対象外で、全額自己負担になります。
福祉用具貸与事業者には、福祉用具に対する専門家である資格を持った「福祉用具専門相談員」が在籍しています。
福祉用具専門相談員は、体の状態や介護の状況や環境から、それぞれに合った介護用品を適切に提案してくれます。
福祉用具貸与事業者はケアマネジャーの方で紹介してもらえます。
インターネット等で福祉用具貸与事業者を調べてある場合でもケアマネジャーに相談し、話を通しておきましょう。
実際に福祉用具を選ぶ際には、福祉用具専門相談員だけではなくケアマネジャー、医師、看護師、理学療法士などからのアドバイスも参考にして選んでいくようにします。
福祉用具専門相談員とは介護保険の指定を受けた福祉用具貸与・販売事業所に2名以上の配置が義務付けられている専門職であり、他の介護保険サービスの専門職と連携しながら、高齢者の自立した生活を、福祉用具でサポートします。
福祉用具専門相談員は、都道府県知事の指定を受けた研修事業者が実施する「福祉用具専門相談員指定講習」を受講し、既定のカリキュラムを修了し、認定資格を得る必要があります。
具体的な業務としては、
【選定相談】
ご利用者の心身の状態や使用環境などから、福祉用具で解決できることを一緒に考え、一人ひとりにあった福祉用具を選ぶ手伝いする。
【計画作成】
相談内容にもとづき、福祉用具の利用計画(福祉用具サービス計画)を立てる。
【適合・取扱説明】
ご利用者のからだの状態や使用環境に合わせ、福祉用具の調整をおこなう。取り扱いについて説明する。
【訪問確認(モニタリング)】
定期的にご利用者宅を訪問し、福祉用具の点検や使用状況の確認などをおこなう。
といったことがあります。
[※参照 一般社団法人 全国福祉用具専門相談員協会]
福祉用具をレンタルする場合は次のようなステップで進みます。
※その後福祉用具専門相談員がも定期的なメンテナンスを行います。
※レンタルは基本的には1カ月単位ですが、日割に対応している業者もいます。
福祉用具貸与事業者は比較的大きな会社が全国規模で展開しているケースも多く、インターネットでも情報も収集ができます。
介護保険の対象外でも「これがあればかなり快適に過ごせるのに」という用具もあると思います。
参考にしてみるといいでしょう。
※ダスキンヘルスレントなど
「特定福祉用具販売」とは、介護用品(福祉用具)の購入費を介護保険から上限10万円まで補助してくれるサービスです。
介護用品は体の状態に合わせて必要な用品も変化していくことや、価格も高額になりがちなことからも上記で紹介したような「福祉用具貸与サービス」などでレンタルをすることが一般的なのですが、入浴や排泄に用いるものなど再利用に心理的抵抗感が伴うもの、使用により形態・品質が変化するものなどについてはこちらの「特定福祉用具」が利用できます。
品目としては以下の5つです。
「特定福祉用具販売」のサービスを利用できる人も要支援1以上の方です。
要介護認定を受けていない人や自立状態という判定結果の場合は対象外です。
「特定福祉用具販売」の支給限度額は10万円です。
この10万円とは、10万円が支給されるというわけではなく、購入金額の合計が10万円のものに対して、1割(所得によっては2割)の自己負担で購入ができるというものです。
(10万円購入すると後から9万円が還元されるという形です)
この額は月々の介護保険利用限度額とは別枠になります。
また毎年4月1日から翌年3月末日までの1年間で10万円(税込)までで、各年度毎に利用でき、年度が代わるとまた利用できます。
限度額を超えた部分は全額自己負担となります。
それでは実際には対象になる介護用品について詳しく見ていきましょう。
特定福祉用具販売では要介護度によって対象品目は変わりません。
全ての用具が要支援1の方から対象になります。
用具名 | 機能 |
価格の目安 |
---|---|---|
腰掛便座 |
・和式便器の上に置いて腰掛式に変更するもの(腰掛式に交換する場合高さを補うものを含む) |
ポータブルトイレ |
和式便器の上に置いて腰掛式に変更するもの |
||
自動排泄処理装置の交換可能部品 |
自動排泄処理装置の交換可能部品のうち、居宅要介護者又は、介護者が容易に交換できるもの |
男性用 |
女性用 |
||
入浴補助用具 |
入浴に際しての座位の維持、浴槽への出入り等の補助を目的とする用具であって次のいずれかに該当するもの |
入浴用いす |
浴槽用手すり
入浴用介助ベルト |
||
簡易浴槽 | 空気式又は折り畳み式等で容易に移動できるものであって、取水又は排水のために工事をともなわないもの |
簡易浴槽 |
移動用リフトの吊り具の部分 |
リフトに連結できるタイプのもの |
吊り具部分 |
特定福祉用具販売の対象となる商品は、各都道府県から指定を受けた特定福祉用具販売事業者から購入しなくてはなりません。
いくら補助金の対象商品であっても、指定業者以外から購入すると申請ができないので注意が必要です。
特定福祉用具販売事業者にも、福祉用具貸与事業者と同様に福祉用具専門相談員2名以上の在籍が義務付けられています。
実際には特定福祉用具販売事業者と福祉用具貸与事業者はほとんどが同時に指定を受けているパターンがほとんどです。
レンタルする品、購入する品ともに、同じ事業所で選んだ方がスムーズで一般的です。
特定福祉用具販売で用具を購入する場合は次のようなステップで進みます。
購入代金は一旦全額支払い、申請後に補助金の額が還付される「償還払い」が一般的ですが、自分たちは自己負担分だけを払い、残金は役所から業者に直接支払うという「受領委任払い」という方式もあります。
業者によって受けつけていない場合もあるので、受領委任払いを利用したい場合はあらかじめ業者選定の時に確認しておきましょう。
福祉用具購入費支給申請書の提出に際には、領収証(利用者名が記載されているもの)、福祉用具のパンフレット等(パンフレットがないときは取扱説明書等)も必要になります。
忘れずにこちらは取っておきましょう。
要支援で担当のケアマネジャーがいない場合は地域包括支援センターが窓口になりますので、まずはそちらで相談をしましょう。
特定福祉用具販売での介護用品の購入は年度ごとに10万円の枠が更新されます。
こちらの枠は計画的に使用させてもらった方がいいと思います。
腰掛け便器や手すりなども少しいいものを思うと高額な商品が多いです。
要支援から利用できるサービスなのですが、ケアマネジャーがついていない場合は知らない方も多いかもしれません。
浴室のすのこや椅子なども介護用のものはしっかりとしていいものになっています。
早めのうちからどんなものがあるのかチェックしておくといいと思います。
以上、「福祉用具貸与」と「特定福祉用具販売」について紹介してきました。
実際にホームヘルパーから受ける介護サービスは施設で利用できるデイケアなどのサービスをとは異なり、このような間接的な介護保険のサービスは知らない方も多いようです。
このようなサービスとしては高齢でも暮らしやすい家にするための住宅改修サービスも介護保険で補助金が出ます。
こういったサービスは介護をする側としてもとてもありがたいサービス出すよね。
親たちもこのようなことが介護保険の対象になっているということ知らない可能性も高いです。
私たちの方から積極的に情報を伝えていきたいものです。