介護サービスにはさまざまなものがあり、利用者のニーズに合わせて組み合わせて利用することができます。
そしてその中でも基本中の基本になるのが訪問サービスに含まれる「訪問介護」サービスです。
介護サービスの種類でも解説しましたが、介護保険で受けることができる介護サービスは大きく、
の3つに分かれていますが、訪問介護は「居宅サービス」の中のひとつで、自宅で暮らしながらそのまま自宅で介護サービスが受けられるというものです。
在宅介護の要となるこの訪問介護は「ホームヘルプ」という名称で呼ばれています。
ホームヘルパー(訪問介護員)の方が自宅に来てくれてさまざまな世話をしてくれます。
「訪問介護」は「訪問サービス」という介護サービスの中の1つであり、訪問サービスの中は他にもいくつかのサービスがあります。
ここではこの訪問サービスについて、詳しいサービス内容の紹介や、サービスを受ける側の心構えなどについても紹介していきます。
訪問サービスには、次のようなものがあります。
まずは基本の訪問介護について解説します。
訪問介護は、資格を持ったホームヘルパー(訪問介護士)が家に訪問し、サービスを行います。
この資格とは「介護福祉士」「介護員養成研修修了者」「介護職員初任者研修修了者(旧ホームヘルパー2級)」等で、資格保有者はそれぞれに介護系の専門学校などでプロとしての技術を学んできています。
在宅介護の基本となる介護サービスです。
日常生活を維持できるようにさまざまなサポートをしてくれます。
ADL(自立日常生活動作能力)や自立生活の意欲の向上につながることも意識しています。
内容は、
の3つになります。
訪問介護の中の身体介護は、身体に直接触れて介助をするサービスのことです。
具体的には次のようなものがあります。
【お願いできること】
どれも体に触れて行う行為です。
訪問介護士(ホームヘルパー)という資格がなければできない仕事です。
特に入浴介助などは力のいれ具合が慣れていないと難しいため、家族が行うと介護する側も体を壊してしまうこともあるので利用頻度は高くなりそうです。
ただしホームヘルパーは医療行為はすることができません。
傷の手当てなどをしてしまうと業務違反になってしまうので頼むことはできません。
医療行為を頼む場合は訪問看護で看護師にきてもらうサービスを利用することになります。
ただし、医療行為とみなされない以下のようなことはホームヘルパーでも処置ができます。
【医療行為とみなされないこと】
[※出典 医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について]
※「たんの吸引」は今まではホームヘルパーはすることができませんでしたが、平成24年4月から決められた研修過程を修了するといった一定条件満たすことで介助が可能になりました。
これは医療行為なの?と悩んでこともあると思うので、参考にしてみてください。
生活援助は料理、洗濯、掃除、買い物など、生活に必要な家事ができない場合にその家事等を代行してもらうものです。
次のようなものがあります。
【お願いできること】
生活援助サービスは一人暮らしや、親世帯だけでのくらしなどで、他に代行してくれる人がいない場合のサービスです。
ですのでこれらの家事などのサービスは、同居している親族がいる場合は頼むことができません。
同じ敷地内に住んでいる場合も同じです。
「家族ができますよね?」と判断されるからです。
ただし、同居していても介護をする家族が仕事等で長時間家を空けてしまい介護ができない場合は頼むことができます。
またこの生活援助サービスを家事代行サービスのように勘違いしてしまう人も多いのですが、あくまでも介護の一環です。
次のようなことは頼むことはできません。
【お願いできないこと】
これはお願いできるのかな?できないのかな?と微妙なところについてはケアマネジャーに確認してみるといいでしょう。
馴れ合いになるとなんでもお願いできると思ってしまうかもしれませんが、気持ちよく仕事をしていただくためにも「できること」「できないこと」は常に意識しておきたいものです。
歳をとると中にはぞんざいな態度をとってしまう人が少し多くなる気もします。
まさか!とは思っても、自分の親がサービス外のそんな依頼をしていないか、私たちも確認をしておくべきだと思います。
「介護タクシー」とは要介護者や体の不自由な人が利用するためのタクシーのことで、運転手は介護士の資格等を所有しています。
車椅子やストレッチャーのまま乗車することができ、運転者が移動だけではなくそのまま乗車降車等の介助も行えます。
介護士の資格を持っていない運転手の場合は身体に触れるような介助や手伝いはすることができません。
(このようなタクシーは福祉タクシー、ケアタクシーなどと呼ぶこともあるようです)
介護タクシーが利用できる用途「行き先」は下記のように限られています。
(ただし、保険を利用せず自費であれば介護タクシーに使われる特別車両を他の用事で利用することは可能です。)
また保険適用となる方は要介護1以上の方で、要支援の方は対象外です。
自宅、有料老人ホームなどで生活していて、1人でバスや電車などの公共交通機関に乗ることができない方のためのサービスです。
訪問介護サービスは、基本的には8時〜18時がサービスの時間帯ですが、契約した訪問介護事業者によっては夜間も対応してくれるところもあります。
また地域密着型サービスの中には「夜間対応型訪問サービス」や「定期巡回・随時対応型介護看護」といった夜間対応型のサービスもあります。
これらを組み合わせていくのもいいでしょう。
ケアプランの作成の際にケアマネジャーに相談してみましょう。
身体介護
【要介護1〜5】
サービスの内容 | 自己負担額 |
---|---|
20分未満 | 165円 |
20分以上30分未満 | 248円 |
30分以上1時間未満 | 394円 |
1時間以上1時間半未満 | 575円 |
※1割負担の場合の自己負担額。
※料金は地域により変動あり。
※要支援の場合は週に2回までなどの利用制限がある。
生活介助
【要介護1〜5】
サービスの内容 | 自己負担額 |
---|---|
20分以上45分未満 | 181円 |
45分以上 | 223円 |
※1割負担の場合の自己負担額。
※料金は地域により変動あり。
※要支援の場合は週に2回までなどの利用制限がある。
介護タクシー
【要介護1〜5】
サービスの内容 | 自己負担額 |
---|---|
通院時の乗車・降車等介助 片道 | 98円 |
※1割負担の場合の自己負担額。
※料金は地域により変動あり。
介護タクシーの料金は乗車・降車の介助は表の通り1回98円ですが、このほかに一般タクシーのように距離や時間で運賃が加算されていきます。
例えば、時間制ですと30分2,500円、
メーター制ですと初乗り1.3キロまで650円、以降0.2キロ毎に80円追加など。
6時間貸し切りで30,000円など。
乗車・降車等介助については介護保険の範囲ですが、移動に関する部分は基本的には保険対象外ですのでどうしても高額になります。
介護タクシーの料金は各事業所によっても異なるので利用する可能性のある場合はしっかり料金を確認しておきましょう。
訪問介護は在宅介護の基本になるサービスですので自然と利用頻度は高くなると思います。
親と離れてくれしている場合などは特に、自分のかわりにいろいろなサービスをしてくれるのは本当に助かります。
ですが、まだ介護のはじめの頃の場合は、なかなか他人が家に来て身体を触ったり、家の中のことをしたりとするのは嫌だと感じる人もかなりいるのではないでしょうか。
それは個人の性格にもよるとは思うのですが、抵抗を感じる人も少なくはないような気がします。
ですので、介護サービスが使えるようになったからといって親の希望もあまり聞かずにしっかりこのサービスを組んでしまうのは少し考えたほうがいいでしょう。
慣れきてホームヘルパーの方とのコミュニケーションもとれてくれば問題はないと思うので、それまではあまり、1回に長時間の依頼をするのは避け、短時間で数回に分けてという方がストレスにはならないと思います。
ホームヘルパーさんが来るのが憂鬱…なんて気持ちになっていたら大変です。
子供に迷惑をかけたくなくて無理をしてしまう親もいると思います。
心の声をしっかり聞いてあげたいものです。
またホームヘルパーの方に対してのこちらの態度としても意識しておきたいことがいくつかあります。
まずは「ヘルパーさん」と呼ぶのではなくちゃんと「○○さん」と名前で呼ぶことが礼儀になります。
またサービス内容を勝手に変えたり、時間を超過して依頼するのも厳禁。
受けてくれることもあるかもしれませんが何度か続けば必ず印象は悪くなります。
迷惑になるようなことはやめましょう。
もちろん、「お金を払っているからいい」というような横柄な態度も絶対に気をつけたいところです。
(たまにお年寄りにはそういう方もいます。自分の親がそんな態度をとらないように私たちも見守りたいものです。)
そして何かトラブルがあるときなどは担当のホームヘルパーさんに直接言うのではなく、契約している訪問介護事業者かケアマネジャーさんに相談する方がいいでしょう。
お互いに気持ちよくお付き合いできるようにしたいものです。
ではその他の訪問サービスについても解説していきます。
訪問入浴介護とは、専用の入浴車で、看護師1名介護スタップ2名の3名以上でが自宅に行き、組み立てができる移動式の簡易浴槽を自宅に設置し、入浴の介助をするサービスです。
また入浴前後の体調に変化がないか、体温、脈拍、血圧、呼吸などのバイタルチェックも行うため、安心して入浴ができるようになっています。
通常使われる簡易浴槽は一般的な家庭用浴槽とおおよそ同じくらいの大きさで、畳2畳分くらいの大きさがあればリビングや居室などどこでも設置できます。
入浴に使用するお湯は入浴車で沸かすことができ、そこからお湯を運び、そのお湯を使います。
マンションの上層階などで車からお湯が運べない場合は、自宅のお湯を利用する場合もあります。
この訪問入浴サービスは、自宅の浴室では入浴が困難な方に対してのサービスになります。
ですので自宅のお風呂で入浴が可能な場合は基本的にはこのサービスの対象者ではありません。
この場合は訪問介護(ホームケア)の入浴介助を受けることになります。
あくまでも自宅のお風呂での入浴が難しい場合と考えておきましょう。
まとめると訪問入浴サービスを受けることができるのは次のような状態の方になります。
要介護度としては、要介護1〜5の方が利用で、医師から入浴の許可が出ている方が利用可能です。
(要支援1〜2でも自宅に浴室がない、感染症などで他の施設のお風呂に入ることができないという場合は利用することができます。)
訪問入浴はだいたいこのような手順で行われます。
訪問から片付けまで約40〜45分です。
各事業所によっては天然の温泉のお湯を運んでくる、高濃度炭酸泉を利用できるなど独自のサービスを取り入れているところもあります。
温泉などに入れてあげたいなという希望がある場合は契約する予定の事業所には特別なサービスがあるかどうかケアマネジャーに確認してみましょう。
【要介護1〜5】
サービスの内容 | 自己負担額 |
---|---|
訪問入浴 全身浴 | 1,250円 |
訪問入浴 部分浴 | 875円 |
訪問入浴 清拭 | 875円 |
【要支援1〜2】
サービスの内容 | 自己負担額 |
---|---|
訪問入浴 全身浴 | 845円 |
訪問入浴 部分浴 | 592円 |
訪問入浴 清拭 | 592円 |
※1割負担の場合の自己負担額。
※料金は地域により変動あり。
訪問看護とは主治医の指示の元で、看護師などが医療的なサービスを行うものです。
先ほどの訪問介護はホームヘルパーの方が行うサービスでしたが、ホームヘルパーの場合は医療的な処置は行うことができません。
ですが、こちらの訪問看護ではそれぞれの専門の資格をもった方が訪問するので、訪問看護では対処できなかったことも可能になります。
※理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の行うサービスも訪問看護とも呼ばれますが、ここでは訪問リハビリテーションの項目で紹介します。
といった項目になります。
病院で受けるような看護師の方からの処理が自宅でもかなり受けることができようになっています。
食事のお手伝いなど訪問看護で受けることができるサービスも一部は受けることが可能ですが、サービスの単価も異なるので、訪問看護では訪問看護でしかお願いできないとを頼んだ方がいいでしょう。
【要介護1〜5】 【要支援1〜2】
サービスの内容 | 自己負担額 |
---|---|
看護師 20分未満 | 311円 |
看護師 30分未満 | 467円 |
看護師 30分以上1時間未満 | 816円 |
看護師 1時間以上1時間30分未満 | 1,118円 |
※1割負担の場合の自己負担額。
※料金は地域により変動あり。
訪問リハビリテーションとは主治医の指示に応じて、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などが自宅に訪問し、機能回復のための訓練を行うサービスです。
それぞれの専門家の役割としては以下のとおりです。
理学療法士(PT:Physical Therapist)
立つ、歩く、寝返りをうつなど、日常生活に必要な基本動作の維持や回復のための訓練を体操や運動、マッサージなどによって行います。
作業療法士(OT:Occupational Therapist)
簡単な工作などの手作業を手伝うなどの行為を通じで、生活に求められる能力の回復をします。また日常生活ができるという安心の気持ちを持たせたり、社会への適応力の維持や回復も目指ししていきます。
言語聴覚士(ST:Speech-Language-Hearing Therapist)
話す・聞く・食べることに対しての機能の維持回復を目指します。発声や嚥下障害などの機能回復訓練を行います。
またこれ以外にも、介護を受けている方が自宅で暮らしやすいように、
なども行ってくれます。
リハビリテーションは通所介護の通所リハビリテーション(デイケア)もあります。
通所リハビリテーションの方がさまざまなリハビリ機器も揃っていますが、体力があまりない場合には通所リハビリテーションは体への負担が大きくなります。
訪問リハビリテーションの場合は自宅で受けられることで各個人にあったリハビリを受けることが可能です。
どちらもメリットデメリットがあるので、ケアマネジャーと相談してより合ったものを選んでいきましょう。
訪問リハビリテーションの基本所要時間は1回20分です。
【要介護1〜5】【要支援1〜2】
サービスの内容 | 自己負担額 |
---|---|
20分1回 | 290円 |
※1割負担の場合の自己負担額。
※料金は事業所により変わります。290円〜310円前後。
※その他少し複雑な料金設定になっている部分もあるの確認のこと。
以上が訪問介護のサービスになります。
自宅へホームヘルパー来てくれるホームヘルプのサービスは、介護サービスの基本になってくると思います。
親が老夫婦だけで暮らしていたり、一人で暮らしている場合には、私たち子供がやってあげられないことを代わりにやってもらうことができます。
また入浴の介助などは慣れない私たちがやると腰を痛めてしまうことも多いので、是非お願いしたいサービスです。
ホームヘルパーの方と良好な関係を築くためにも、一度は担当してくれるヘルパーさんには会っておくべきです。
そして気になることなどがある場合には、連絡ノートのようなものを作ってヘルパーさんに直接伝えるような工夫をしていくのもおすすめです。
また万が一、担当してくれるホームヘルパーさんが不適切だと感じる場合には、ケアマネジャーや介護事業所に言って担当を変更してもらうことも可能です。
私たちだけならいいですが、介護を受ける親が毎回気分を害してしまっては残念です。
気持ちのいいサービスを受けられるようにしていきたいものです。
訪問介護サービスの内容をしっかり理解して、親の介護の状態に合わせて適切なサービスを組んでもらえるように私たちも考えていきましょう。