終の棲家(ついのすみか)はどこがいい?|親が最期に暮らす場所

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終の棲家(ついのすみか)とは?

終の棲家

人生の最期をどこで迎えるのかというのは、高齢者にかかわらず40代、50代でも1度は考えたことがあるのではないでしょうか。

 

「終の棲家(ついのすみか)」とは、まさに最期を迎える時まで生活する住まいのことです。

 

この「終の棲家」という言葉は、作家の仙川環さんによる2007年の小説とそれを原作として2014年にNHK BSプレミアムで放送されたテレビドラマによって多くの人が使うようになった言葉です。
「終の住処」という表記では作家磯崎憲一郎さんが2009年に小説として発表し第141回芥川賞を受賞しています。

 

親世代の方ではかなり多くの方が読まれているようで(私の両親もしっかり読んでいました)、これを機に自分の終の棲家について考え始めたという方もたくさんいるようです。

 

「人生の最期はどこで過ごしたいのか」とはっきり親の希望を聞いたことはありますか?

 

普通で考えたら「当然自宅でしょう」と思いがちですが、意外とそれほど単純でもないようです。

 

親と同世代の方が終の棲家についてどんな風に考えているのか、また終の棲家、最後に暮らす場所にはどんものがあり、どんな方法があるのかなどをここではまとめてみました。

 

 

親は終の棲家をどこにしたいと考えているのだろうか

 

「最期の時間をどこで過ごしたいか」
という質問に対し、まだ若いうちはきっとほとんどの方が自宅で過ごしたいと答えると思います。

 

ですが、年々体が弱り自由が利かなくなってきたり、「死」を実際に意識するような状態になってくると、

 

 

「自宅で迎えたいのが希望だけど家族に迷惑をかけるくらいなら施設の方がいいかな」

 

「頭が元気なうちはいいけどもし私が認知症になったら施設に入れて欲しいわ」

 

「がんの場合は延命治療はしないでホスピスがいいなあ」

 

等々

 

いろいろと希望に変化が出てくるようです。

 

これもある程度元気なうちだから聞けることで、本当に病気が重くなっていたら簡単には本音を聞き出すことはできないでしょう。
(親の方から言ってくれないと本当に聞きにくいですもんね・・・すごく大切なことなのに)

 

以下は実際の調査結果です。

 

 

治る見込みのない病気になった時、どこで最期を迎えたいですか?

終の棲家はどこ

(調査比率:男性62.4%、女性48.2%)

 

[出典 内閣府「高齢者の健康に関する意識調査」平成24年度より

 

 

実際に亡くなった場所は・・・

亡くなった場所は

[※出典 厚生労働省 平成26年度人口動態調整

 

 

希望に対し、実際は病院等で最期を迎える方が圧倒的に大きくなっています
ただし、これはあくまで最後の時ですからギリギリまでは自宅で過ごしたという方を入れればもう少し大きい数値になっていると思います。

 

 

 

はじめのグラフの方では半数以上が自宅での最期を希望していますが、これは体の状態(健康度)によって大きく変化します。
病状ごとに調査をした資料を見るとそれがはっきりわかります。

 

人生の最終段階をどこで過ごしたいか

 

@末期がんではあるが食事はよくとれ、痛みもなく、意識や判断力は健康な時と同様な場合

 

A末期がんで食事や呼吸が不自由ではあるが、痛みはなく、意識や判断力は健康な時と同様の場合

 

B重度の心臓病で、身の回りの手助けが必要ではあるが、意識や判断力は健康な時と同様の場合

 

C認知症が進行し、身の回りの手助けが必要で、かなり衰弱が進んできた状態

 

[出典 人生の最終段階を過ごしたい場所は?

 

 

入浴の介助

このように同じような終末期(人生の最期の時)であっても希望はかなり変わってきます

 

特徴としてはまず判断力の有無です。
これがしっかりしている場合はやはり住み慣れた家でその時を過ごしたいと思うものなのでしょう。

 

そしてもうひとつのポイントは身の回りの世話が自分でできるかどうか

 

お風呂などはホームヘルパーさんの助けを借りることもできますが、排せつについてはどうしても家族の仕事に。

 

おむつなどを家族(子供)に替えてもらうのがどうしても耐えられないという親も多いのです。

 

この気持ちはよくわかりますよね、家族だからこそ、娘、息子だからこそ、自分の一番弱い部分は見せたくないと思っている親はとても多いのです。

 

また「認知症になったら絶対に私がわかってもわからなくても施設に入れて欲しい」と前もって頼む親もいます

 

このように「終の棲家は自宅にしたいけど・・・家族に迷惑をかけるくらいなら施設や病院でいい。」というのは親の強がりではなく本心である場合多いのです。

 

素晴らしいな子供としては、できることなら親には住み慣れた自宅でその最期を迎えて欲しいと願ってしまいますが、なかなか現実は厳しいようです。
ただ、最後の看取りの時は病院でも、ギリギリまで自宅で介護をしたり、途中で老人ホームに入ってもらっていても最後の終末期(ターミナル期)には自宅に帰ってきてもらって家族で看取ろうということもあります。
反対にもう初めから有料の立派な設備があり、サービスの良い老人ホームで最期の時を世話なく過ごしたいという思っているケースもあるかもしれません。
希望通りにできるかどうかは別にしても親の希望を聞いておきたいものです。

具体的には最期の場所(終の棲家)にはどんなところがあるのか

 

では具体的には終の棲家にはどんな場所が考えられるのでしょうか。
その場所としてはいくつかのケースがありますが、方針としては大きく2つに分かれます。

 

1つは「積極的治療をし延命治療も行っていこう」というもの。
もう1つは「緩和ケア中心で延命治療は行わない」という考えのもの。

 

 

メモ

この「緩和ケア中心で延命治療は行わない」という考えの中には「看取りケア」と「ターミナルケア」と呼ばれるものも含みます。
これらは死を目前にした人に治療を目的とするのではなく、精神的・身体的な苦痛を軽減して一人一人が残された時間をできるだけ充実した素晴らしいものにしようというホスピスの考えから生まれたものです。
介護施設(老人ホームで)でのこの方針のケアを「看取りケア」と言い、医療施設でのこのケアを「ターミナルケア」と呼びます。

 

病院で最期を迎える

病院での最期

まずは一番実際に亡くなる方が多い病院。
病気で入院し、そのまま亡くなるというケースです。
自宅から救急で運ばれそのまま亡くなるという場合もありますし、何年も入院をしていて自宅に帰ることなくそのまま亡くなるというケースもあるでしょう。

 

最期の場所を病院に選んだ場合は、基本的には「積極的治療をし延命治療も行っていこう」という考え方です
※事前に延命治療を拒否する意思の確認が取れていれば無理な治療はされません。

 

 

自宅で最期を迎える

自宅で最期を

自宅での看取りケアも痛みをとるための対症療法と緩和ケアになります。
延命治療は原則行いません。

 

在宅で看取る場合は在宅医を選びます。
また訪問看護師、薬剤師などにも連携を取ってくれます。
そして最後の時には病院へ行かなくても死亡診断書の作成も請け負ってくれます(特別な死因の場合を除く)。

 

家族、在宅医、訪問看護師、訪問介護スタッフの連携が必須です。
住み慣れた自宅での最期ですから一番の理想ではあります。
ただし病院や施設とは異なり24時間付き添っているのは家族です。
家族の負担はやはり大きくなるのは否めません

 

介護施設で最期を迎える

 

特別養護老人ホームなどの介護施設では緩和ケアが中心になります。
当然ですが延命を望む場合は病院に移されます。
介護施設での看取りケアはまだまだ受け入れてくれる施設が少なく需要に対して数も足りない状態です。
入所した老人ホームでそのまま死を迎えることができるのかは各ホームによって違い、受け入れ不可の場合も本当の末期が来たら自宅や病院に移されるケースがまだ多いのが現状です。

 

看取りの状況

 

[※出典 介護施設等の現状について - 厚生労働省

 

ただし、介護施設と病院との連携は当然ですがとてもスムーズですので、本人も家族もそれほど悩まされることはなくその日を迎えることができると思います。

 

看取りができる介護施設

介護施設に入所した後もなにか少し病気が悪化した場合などは病院に転院されます。
この行き来は何度か体験することになるのでいきなりところへ来た!ということではないのでそれほど違和感はないんじゃないかなと思います。
看取りまでできる特別養護老人ホームは本当に人気で入所まで10年待ちなんてケースもあるのです。
自宅の次に慣れた場所でと介護施設での看取りを希望する方も多いですが現実はまだまだ厳しそうです。

 

介護施設の種類についてはこちらで詳しく解説しています
→ 老人ホームの種類|住む介護施設(施設介護)の種類や違いを知ろう

 

 

ホスピスで最期を迎える

 

ホスピスで最期を迎える

ホスピスは末期がんで余命6か月の宣告を受けた方が最期の時を過ごす医療施設です。
ここでも緩和ケアが行われ最後の看取りケアまで過ごすことができます。
ただし、入院の条件はあくまでも末期がん(もしくはエイズ)患者で余命6か月が条件。
誰でも入院できるわけではありません。

 

ホスピスの基本的な方針は患者の生活のレベルが落ちないように最後の時間を快適に過ごせるように医師、看護師、薬剤師、カウンセラーがチームとなってサポートを行います
対症療法や抗がん剤治療や延命治療は行いません。

 

これ以外にも快適に自分らしく生きるための方針として、

  • 患者本人のやりたいことや家族との時間がとても優先される
  • 面会は基本24時間できる
  • 家族の宿泊が許可されている
  • 症状をみて一時帰宅なども許可される

といった一般の病院ではなかなか許可されないようなことも認められるケースが多いのが特徴です。

 

5つのホスピスの種類

 

ホスピスには大きく分けると5つの種類があります。

 

@ホスピス緩和ケア病棟
一般の病院(医療施設)の一部のフロアなどをホスピスとして利用するケース。
他の病棟とは違いここの部分だけがホスピスの運営方針で進められます。

 

A病院内独立型ホスピス
病院に併設されたホスピス専用の施設。
個室であることも多くより自由な生活が送れる。

 

B完全独立型ホスピス
病院の運営ではなく完全に独立した緩和ケアのみを行う医療機関。
日本ではまだ少数。

 

C在宅ホスピス
在宅医や訪問看護師から緩和ケアを受ける。介護サービスなども併用しながら家族で看護をしていく。
自由度は高いがやはり家族の負担は大きいことも。

 

Dホームホスピス
マンションなどを利用したホスピス。
一人暮らしなどで自宅での在宅ホスピスが難しい場合に利用される。

 

 

一般的にはまだ@、Aの形が多いですが、これからはBの独立型が増えてくるのではないでしょうか。

 

看取りができる介護施設

ホスピスのことがいろいろわかると、自分の時はホスピスがいいなあ・・と思ってしまいました。
ただし、これはガンの場合だけなのですが・・・。
残された時間を家族との時間を大切にしながら過ごせて、病院なので介護の迷惑も家族にかけることが少ない、というのはありがたいですね。

 

希望どおりにはできなくても

 

以上にように最後の時を過ごす終の棲家にはいくつかの選択肢があります。

 

希望が全て叶うわけではありませんが、自分の親が最後に何を望んでいるのか、どう終末を過ごしたいのかはきちんと確認しておくべきです。
特に延命治療についてはどうしたいのかは意思をしっかり聞いておく必要があります

 

親の最期のことをいろいろ考えていくと中で「自分ならどうだろう?どうしたいだろう?」というのも深く考えるようになりました。

 

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