介護保険を利用してできる住宅改修について知っておこう

介護保険のバリアフリーリフォーム

高齢になり何かしらの支援や介護が必要になった状態の親が自宅でそのまま暮らしている場合、今まで暮らしている住宅のままでは生活がしにくいという場合も出てくると思います。
そんな時に利用したいのが、介護保険から住宅の改修費の一部が支給る補助金制度です。

 

例えば階段や浴槽に手すりを付けたりという介護リフォーム(住宅のバリアフリー化)を行うと、これだけでもかなり暮らしやすくなるはずです。


 

しかし案外この住宅改修費の補助金制度については知らない方も多いようです。

 

介護保険は訪問介護通所介護のような介護サービスだけではなく、このようなことにも利用できることを知っておきましょう。

 

ここではその内容や申請方法などについて詳しく解説していきます。

 

介護保険を利用できる住宅改修って?

 

介護保険では、高齢者が自宅で快適に暮らすことができるように住宅の改修を行った場合、その費用の一部が補助金として支給されます。

 

この補助金は通常の介護保険で支給される月額の支給額とは別のもので、別枠として請求できます

 

この制度を利用できるのは、要介護認定を受け、要支援1〜2、要介護1〜5と認定された人です。

 

要介護認定を受けていない場合や自立状態と認定された場合は対象外になります。

 

要介護認定についてはこちらで解説しています。
→ 要介護認定の申請方法から調査・判定・認定まで|要介護度と支給限度額

 

また対象となるのは自宅で生活をしている人のみです。

 

親と同居、親が単身は問いませんが、一時的に暮らしているのではなく、住民票がその家にあり、実際にそこで暮らしている住宅に対する工事であることが条件になります。

 

 

介護保険の住宅改修費の支給額は

 

介護保険で申請できる住宅改修の工事費の上限は20万円です。

 

これは20万円がそのまま支給されるということではなく、20万円分の改修費分に対しては保険の対象になるという意味で、その20万円のうちの1割(所得によっては2割)は自己負担になります

 

改修リフォームに20万円かかったとすると、18万円が介護保険から支給され2万円は自己負担になります。

 

改修費が30万円になった場合は20万円以上は全額自己負担ですので、介護保険から18万が支給され、残りの12万は自己負担という計算になります。

 

介護保険住宅改修費のイメージ

 

改修費は1度に使い切る必要はなく、数回に分けて利用することもできます

 

手すり等の工事でまず5万円を使ったとすると、残りの15万円分の枠は次回にとっておき、1年後2年後にまた改めて改修リフォームをし改めて申請するということもできます。

 

この制度は1人1回(限度額20万までを1回)のみ給付される制度で、一度利用すると要介護度の状態区分が3段階以上上がるまでもう使うことはできません。
(要支援1から要介護3になった、要介護2から要介護5になったなど)

 

ただし、転居した場合は新しい住まいの改修工事で再度利用することができます

 

 

メモ

この制度は各住宅に付き1回ではないので、一緒に暮らしている両親が2人とも対象の場合はそれぞれ20万、合計40万の申請が可能になります。
ただ1つの工事に対して重複はできないのでそれぞれ別の工事に対して申請する必要があります。

 

 

介護保険で給付対象となる住宅改修の工事内容

 

「1人当たり20万円までの工事金額が対象」といっても、どんな工事でも対象となるわけではありません。

 

高齢者が自宅で生活をしやすくするために支払われるものですからそれに準じた工事でなくてはなりません。

 

厚生労働省から指定されているのは以下の工事です。

 

(1)手すりの取付け
(2)段差の解消
(3)滑りの防止及び移動の円滑化等のための床又は通路面の材料の変更
(4)引き戸等への扉の取替え
(5)洋式便器等への便器の取替え
(6)その他前各号の住宅改修に付帯して必要となる住宅改修

 

[※出典 介護保険における住宅改修 ー 厚生労働省

 

手すりの取付け

介護リフォーム手すり

廊下、トイレ、浴室、玄関、玄関アプローチなどでの転倒予防や移動のために手すりを取り付ける工事です。

 

手すりの形状は、二段式、縦付け、横付け等があります。

 

※便器に取り付けたり、浴槽縁に取り付ける、いわゆる建築工事をともなわない手すりは「福祉用具貸与」または「特定福祉用具販売」で利用できるので、そちらで申請します。

 

 

 

工事内容 工事費の目安
階段と廊下に手すりを付ける 8万〜10万
玄関に手すりを付ける 3万〜6万
トイレ内の手すりを付ける 3万〜6万

 

段差の解消

段差の解消

居室、廊下、トイレ、浴室、玄関等の室間の床の段差、玄関から道路までの通路等の段差の解消、または傾斜を解消する工事です。

 

具体的には、敷居を低くする工事、スロープを設置する工事、浴室の床のかさ上げなどを指します。

 

車いすなどでの移動も容易になります。

 

屋外でも道路に出るための通路部分であれば対象となります。また、掃き出し窓、縁側と地面との段差解消も対象となります。

 

※取り付け工事をともなわないスロープや段差解消機は「福祉用具貸与」で、浴室内のすのこは「特定福祉用具販売」で利用できます。
※階段昇降機やホームエレベーターは対象外です。

 

 

 

工事内容 工事費の目安
脱衣所と浴室の段差を解消する 〜20万
居室の段差を解消する(一カ所分) 1万〜3万
玄関アプローチと玄関ドアの段差の解消 20万以上

 

 

滑りの防止及び移動の円滑化等のための床又は通路面の材料の変更

 

居室での畳をフローリングやビニールへの床材等の変更、浴室においては滑りにくいものへの変更などが対象になります。

 

屋外の通路を滑りにくい舗装材するという工事も対象になります。

 

※滑り止めマットを浴室その他に敷くだけでは対象となりません。
※階段の滑り止めとしてカーペットを貼ったり剥がしたりも対象になります。

 

工事内容 工事費の目安
滑りにくい床材へ変更(面積のよる) 20万〜

 

引き戸等への扉の取替え

引き戸へ変更

開き戸(ドア)を引き戸や折り戸、アコーディオンカーテン等に取り替えるといった扉全体の変更のほか、ドアノブの変更、戸車の設置なども含まれます。

 

※自動ドアは対象外です。
※門(門扉)も対象になります。
※扉が空けやすくなるように軽い素材にものに変更するというのもできます。

 

工事内容 工事費の目安
居室のドアを引き戸へ 8万〜12万

 

洋式便器等への便器の取替え

洋式トイレへの変更(介護リフォーム)

和式便器から洋式便器への取り替えなどが対象です。
洋式便器の方向を変える工事も対象になります。

 

※和式からの変更はいいのですが、すでに洋式便器になっているトイレを暖房便座や洗浄機能付き便座に取り替える工事は対象外です。
※工事を伴わない据え置きの腰掛便座は「福祉用具購入費の支給」で利用できます。

 

工事内容 工事費の目安
和式から洋式便器へ変更 18万〜25万

 

 

その他前各号の住宅改修に付帯して必要となる住宅改修

上記の工事の際に付帯する工事として、

 

・手すり取付けのための壁の下地補強
・浴室の床段差解消に伴う給排水設備工事
・床材変更のための下地の補修、根太の補強、通路面の材料の変更のための路盤の整備
・扉の取替のための壁または柱の改修工事
・便器を取替えるための給排水設置工事や床材変更

 

なども対象になります。

 

ただのリフォームはダメ

以上のような工事が介護保険での給付の範囲です。

 

ただし建物が古くなっていたから改修というような使い方には適応になりません

 

 

対象にならない工事も併せて他のリフォームも同時行った場合は、按分など計算し、住宅改修費の支給対象となる費用を算出して申請をします。

 

 

介護保険の住宅改修費の申請の流れ

 

介護保険を使って住宅の改修を行う場合は以下のようなステップで進めます。
要介護認定で要支援1以上の認定を先に受けている必要があります

 

 

ケアマネジャーに相談

ケアマネジャーに相談

まずは担当のケアマネジャーに住宅改修の希望があることを伝え相談します。

 

どんな介護リフォームをしたいのか、その工事は対象になるのかなどもいろいろ相談できます。

 

ケアマネジャーは親の体の状態もわかっているので、どんな工事が必要なのかもいろいろアドバイスももらえると思います。
よく相談してしっかりとした計画を立てていきましょう。

 

そして計画がまとまったら、役所に提出するための「住宅改修理由書」を作成を依頼します

 

 

地域の介護リフォームが得意な施工業者も紹介してもらえるはずです。

 

その後の段取りも基本的にはケアマネジャーに確認して進めるといいでしょう。

 

メモ

要支援の場合で担当のケアマネジャーがいない場合は地域包括支援センターに相談に行きます。
こちらで住宅改修理由書も作成してもらえます。

 

施工業者からの改修工事の見積もりを取る

 

介護保険を利用して住宅改修を行うには各市町村の担当窓口の事前の申請が必要なのですが、この際に工事費の見積書が必要になります。

 

ですので、ケアマネジャー同席の上で、施工を依頼する予定の業者に現場で下見(現地調査)をしてもらい、詳しい打ち合わせをしながら工事費用の見積もりを依頼します。

 

おおよその工期なども確認しておきましょう。

 

メモ

見積もりは1社ではなく複数の会社から取るのが望ましいというのが国の方針で、ケアマネジャーにその指導が出ています。
ですので「合い見積もりは気まずい・・・」ということはありませんので、複数業者に依頼して見積もりを取るようにしていきましょう。
[※出典 居宅介護住宅改修費及び介護予防住宅改修費の支給について」の一部改正について

 

市町村役場へ住宅改修費の事前申請

 

介護保険を利用して住宅改修を行うには各市町村の担当窓口の事前の申請が必要です。

 

必要な書類は以下の通りです。

 

○住宅改修費支給申請書
○住宅改修が必要な理由書
○工事費見積もり書
○住宅改修後の完成予定の状態がわかるもの(写真又は簡単な図を用いたもの)

 

「住宅改修費支給申請書」は市町村役場の窓口でもらえます(ほとんどはホームページでダウンロードもできます)。
これは原則利用者(私たち)が書きます。
(もちろん書き方がわからない場合などはケアマネジャーに相談可能です。)

 

「住宅改修が必要な理由書」はケアマネジャーが作成します。
この書類はケアマネジャー(介護支援専門員)以外では理学療法士、作業療法士、福祉住環境コーディネータ検定試験2級以上の資格を有する者が理由書を作成することができます。
それ以外の人が書いた書類は認められません。

 

「工事費見積もり書」は施工予定業者から出されたものになりますが、自治体によっては、介護保険を利用するために見積書のひな型が決まっていることもあります。
その場合には形式に合わせます。

 

「住宅改修後の完成予定の状態がわかるもの(写真又は簡単な図を用いたもの)」は施工予定の業者の方で作成をしてくれるはずです。
一般的なリフォームでも施工前、施工後のイメージを表した書類は提出されるのでそのような提案書を作成してもらいましょう。

 

役所へ申請

以上の書類を取り揃えて申請します。

 

その後審査が行われ、介護保険の対象であるか否かが認定されます。
ケアマネジャーと相談しての申請ですから審査に通らないということはあまりないと思いますが、認定されなければ補助金はおりません。

 

また認定が下りないうちに工事を始めてしまうとその工事は対象外になります。
くれぐれも先に進めてしまわないように審査結果を待ちましょう。。

 

住宅改修工事開始〜完成

 

認定が下りたら正式な契約をし工事を開始してもらいます。

 

認定が下りても下りなくても工事を行うと決めている場合は先に契約をしてもいいのですが、そうではない場合は念のため認定が下りるまで待った方が無難です。

 

施工業者への工事費の支払い

 

工事が終了したら施工業者に請求書を発行してもらい、まずは代金を全額支払います

 

 

領収書はこのあとの手続きで必要なので必ず取っておきましょう。

 

メモ

このように先に全額を払う支払方法を「償還払い」といいます。
原則はこの償還払いになりますが、「受領委任払い」といって自己負担分だけを支払う方法もあります。
この場合は工事費の残金は市町村から直接業者に支払われます。
工事代金を一時的でも立て替えるのは難しいという場合などはこの受領委任払いを利用すると良いでしょう。
「受領委任払い」にするには「受領委任払い取り扱い事業者」の登録を受けている事業者で工事をする必要があるので、希望がある場合は業者選択の時点でケアマネジャーに相談をしておきましょう。

 

市町村役場へ工事完了の報告と申請

 

再度役所へ以下の書類を揃えて申請を行います。

 

○住宅改修に要した費用に係る領収書
○工事費内訳書
○住宅改修の完成後の状態を確認できる書類(便所、浴室、廊下等の箇所ごとの改修前及び改修後それぞれの写真とし、原則として撮影日がわかるもの)
○住宅の所有者の承諾書(住宅改修を行った住宅の所有者が当該利用者でない場合)

 

「住宅改修に要した費用に係る領収書」は工事代金の支払いの際に発行された領収書になります。

 

「工事費内訳書」は領収書として支払った代金の明細になっているものです。
工事にかかった費用が詳しく掲載されています。業者から受け取っておきましょう。

 

「住宅改修の完成後の状態を確認できる書類」は図面や写真などです。
工事業者の方に作ってもらえるように依頼するといいでしょう。

 

「住宅の所有者の承諾書」はその住宅が親名義ではない住宅の場合(子供所有の家に親が同居しているなど)などに必要となります。

 

 

住宅改修費の支給

 

補助金が支給されます

工事終了後の申請の後、工事が適切に行われたかのチェックが行われ、適正と認められると「支給決定」となり、申請者に通知がされ、あらかじめ指定してある口座に補助金が振り込まれます。
(「受領委任払い」の場合は業者に残金が支払われます)

 


 

以上が介護保険を使った住宅改修工事の補助金申請の流れになります。

 

「福祉用具貸与」と「特定福祉用具販売」って

福祉用具

介護保険には「福祉用具貸与」、「特定福祉用具販売」というものもあります。

 

こちらは介護保険を使って1割(所得によっては2割)の自己負担で介護に使う器具をレンタルできたり購入できたりするサービスです。

 

建築工事を伴わないような手すりを便器に取り付けたり、浴槽縁に取り付ける、などの器具はこの制度を使うことができます。

 

このようなサービスも住宅改修の補助金制度を合わせて利用していきましょう。

 

 

 

 

在宅介護のしやすい家に

介護がしやすい住宅に

介護保険を使って住宅の改修工事の補助金がもらえることは案外知らない方も多いようです。

 

要介護になってケアマネジャーが担当につくとそこではじめて制度を知ることもあると思いますが、要支援の状態だとなかなか情報として見落としてしまっているかもしれません。

 

介護保険の住宅改修補助金は要支援1から要介護2へと3段階上がるとまた申請ができます

 

要介護1や2になってから初めて改修工事をすると次に補助金が出るのは要介護4や要介護5の状態です。

 

この状態ですとなかなか自宅での在宅介護も難しくなっていることも多いかと思います。

 

ですので、しっかり補助金をつかって住宅改修を行いたいという計画がある場合は、早めに申請することも考えておくといいでしょう。

 

住宅改修でドアを引き戸にしたり、段差をなくしたり、トイレを改修したりと介護リフォームを行うことで、今まで不自由に感じていたことがかなり解決されることもあるでしょう。

 

親だけで暮らしている場合は特に気が付かずに不自由な生活をしているかもしれません。
ここはぜひ私たち子供たちが改修の勧めをしていった方がいいと思います

 

また親と同居し、実際に介護をしている場合も同様です。

 

私たち介護をする側にとっても介護がしやすい住宅にすることは大きな意味があるでしょう。

 

せっかくの国の制度ですから、ぜひ計画的に利用させていただきましょう。

 

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