PR
自宅に住みながら介護サービスを受ける在宅介護(訪問介護や施設に通う通所介護など)が難しい場合には、そこで暮らしてサービスを受けるという施設介護を考えなくてはなりません。
いわゆる「老人ホーム」と一般的には呼ばれているのが、この完全に介護施設で住む(暮らす)という形式をとる介護施設です。
老人ホームへの入居は、状態が悪化し在宅介護がもう難しくなってきたからというケースが多いとは思いますが、まだまだ自立している元気な状態であってもあえて入居をするというケースもあります。
入居できる施設はぞれぞれの要介護度などによっても変わってきます。
また民間の施設もあれば福祉施設もあります。
かかる費用も大きく変わります。
このように一言で老人ホームといってもその種類は全く違うのです。
「老人ホームなんてまだまだ先」と思っていても、いざというときのためにもその基礎知識はしっかり身につけておくべきです。
ここでは老人ホームの種類や特徴などを比較し詳しく解説していきます。
詳しい説明の前に、そこで暮らすことができる高齢者のための施設のことは「施設介護」、「施設サービス」、「介護施設」、「老人ホーム」、「高齢者施設」などいろいろな名称で呼ばれるため混同しやすいようです。
一度整理をしておきましょう。
まず、「施設サービス」(施設介護、施設介護サービスも同じ)とは介護保険施設に入居して受ける介護サービスのことを言います。
その介護保険施設とは「介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)」「介護老人保健施設」「介護療養型医療施設」の3つだけです。
介護保険施設は一般の民間企業は運営をすることが出来ません。
運営できるのは、地方公共団体や社会福祉法人、医療法人などに限られています。
また公共の施設に近いため国からの補助金が出ているため、入居にかかる費用も低額です。
本来は施設介護(施設サービス)というのはこの介護保険施設に入所する場合のことだけを指します。
これに対し「老人ホーム」、「高齢者施設」というのは、民間の企業が提供している住む介護施設も含まれます。
「有料老人ホーム」や「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」などに入居していても介護保険を利用することはできますが、これらは民間の企業が運営しています。
また地域密着型サービスの「グループホーム」(※こちらも民間の運営)、福祉施設ですがケアハウスも上記の介護保険施設ではないため、こちらに含まれます。
大きく見ればすべてが「住む介護施設」、「老人ホーム」、「高齢者施設」であり、その中に「施設サービス(施設介護、施設介護サービス)」が入っていると考えるとわかりやすいと思います。
※ここでは住む介護施設のことは総称としては老人ホームと呼ぶことにします。
老人ホームには様々な種類があります。
公共に近い介護保険施設が運営するもの、民間の介護施設が運営するものという運営母体や認可の有無によっての違いもあります。
また、要介護度や諸処の条件によって(寝たきりになってしまった重度の介護状態の場合、認知症が進行している場合、少しの支援があれば生活は自立できる場合など)、各施設ごとに受け入れることができる対象者も大きく異なります。
「まだまだ介護などは必要がなく元気に暮らせるが快適な老後の生活のために暮らしやすい専門施設に入居したい」というケースもあるでしょう。
(ホテルのような暮らしができる高級有料老人ホームも需要は多いものです)
以下の表は老人ホームをそれぞれの運営母体、サービス形態、入居できる介護度(例外もあり)についてまとめたものです。
運営母体 |
サービスの形態 | 自立 | 要支援1 | 要支援2 | 要介護1 | 要介護2 | 要介護3 | 要介護4 | 要介護5 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
公的な施設 | 介護保険施設 |
特別養護老人ホーム |
|||||||
介護老人保健施設 | |||||||||
介護療養型医療施設(療養病床) ※2017年末で廃止・転換 |
|||||||||
福祉施設 |
ケアハウス (軽費老人ホーム) |
||||||||
民間企業 | 有料老人ホーム | 介護付き有料老人ホーム | |||||||
住宅型有料老人ホーム | |||||||||
健康型有料老人ホーム | |||||||||
高齢者向け住宅 | サービス付き高齢者向け住宅 | (施設によっては可能) | |||||||
介護型サービス付き高齢者向け住宅 | |||||||||
シニア向け分譲マンション | (自宅なので原則は自由) | ||||||||
地域密着型サービス |
グループホーム (認知症対応型共同生活介護) |
それではそれぞれの施設の特徴をみていきましょう。
介護保険施設とは、介護保険サービスで利用でき、介護保険法に基づいて都道府県知事の指定を受けた施設のことをいいます。
介護保険施設が運営する施設は「特別養護老人ホーム」、「介護保険施設」、「介護療養型医療施設」の3つだけです。
運営は、地方公共団体や社会福祉法人または医療法人になり、公的なサービスになります。
そのため入居時に一時金などの費用はかからず、施設内でかかる月額の利用料も比較的低額です。
介護サービスは施設内で行われ、介護保険で賄われます。
負担額としては介護保険の規定通り、1割(条件によっては2割)程度です。
入居するには要介護認定で要介護の認定を受けている必要があります。
介護保険施設の中で最も人気が高いのは通称「特養(トクヨウ)」と呼ばれる介護老人福祉施設です。
医師の常駐は義務づけられていませんが、日中は看護師も在中し医療のバックアップ体制も整っています。
費用も民間のサービスに比べるとかなり安くすみます。
また特養には特定入居者介護サービス費という制度があり、食費や居住費は利用者の所得によって4段階に分けれて設定されるため、所得が低い人ほど少ない負担額ですむことになっています。
(※ただし所得が高い場合は民間のサービスよりもかえって高額になることも)
このように人気が高い分、都心部を中心にどこも不足していて、何年も入居を待っている人もいます。
その数は全国では35万人以上、各施設30人〜100人の人が待機しているという状況もザラです。
また特養への入居は申し込み順ではなく必要度の高い人からになります。
ですので、申し込んだからそのうち入ることが出来るというものではないということは理解しておきましょう。
特養は国の総量規制があるため新規でどんどん建設されるということはありません。
ですから現在はいつでも数が不足してしまっているのです。
特養については、まだ施設介護を考えていない段階でも一度地域の施設がどのくらいの状況なのか(入居待ちの状態など)を確認しておくといいでしょう。
入居の優先基準も各自治体によって異なります。
あわせてケアマネジャーにも「この地域の特養ってどのくらいあるんですか?やっぱりいっぱいなんでしょうか?」くらいの感じで軽く聞いておくといざという時の目安になります。
入居資格は原則としては要介護3以上、自宅で介護ができない65歳以上の方が対象となります。
【費用の目安】
入居時一時金(前払い金) | 月額費用(食費等を含む) |
---|---|
なし | 約6万〜15万円 |
※要介護状態で1割負担の場合。食事代等の生活費用も含むおおよその概算。
介護老人福祉施設は通称「老健(ロウケン)」と呼ばれる施設です。
この施設は病気やケガなどで入院をしていて、退院後にすぐに自宅に戻れない人を対象としています。
老健はここでリハビリを行い、自宅へ帰ることを目的としています。
ですので当然入居し続けることはできず、原則は最長で3カ月という期間が設けられています(必要に応じて延長はあり)。
自宅への復帰のため、3ヶ月の間にしっかりリハビリを行うのがこの老健です。
介護老人福祉施設には医師が常駐しているので、症状が悪化した場合は診察や治療もすぐに受けることが出来ます。
同じ介護保険施設ですが特養に比べるとこちらの方が空きは多く、地域とタイミング次第で入居が可能なことも多いようです。
老健への入所を考える場合は、入院をしている間にケアマネジャーや医師と相談をしておくのがいいでしょう。
老健は本来はこのようにリハビリのための施設なのですが、特養の空きがあまりにも少ないため、特養入所までのつなぎとして老健に入っている方もいるそうです。
もちろん推奨された利用法ではありませんが、これには介護保険施設の数が足りないため、起こってしまっている複雑な背景があるようです。
入居資格は要介護1以上です。
【費用の目安】
入居時一時金(前払い金) | 月額費用(食費等を含む) |
---|---|
なし | 約10万〜15万円 |
※要介護状態で1割負担の場合。食事代等の生活費用も含むおおよその概算。
「介護療養型医療施設(療養病棟)」は、長期に渡って療養が必要な人のための施設として設けられ、病院や診療所に併設(または隣接)される施設です。
状態としては寝たきりなどの重度の要介護者が対象になります。
施設の中では特にレクレーションなどが行われるということもなく、施設といっても実際には病院と変わらないのでは?ということから、2017年末からは廃止・転換することになりました。(2024年3月末までの移行期間あり)
ですのでこちらの施設についてはこれからは介護療養病棟(病院内に設置されているもの)などに転換されていきますので新規での入居についてはあまり期待しない方がいいでしょう。
[※参考 介護療養病床・介護医療院のこれまでの経緯-厚生労働省]
有料老人ホームは国の法律により、「介護付き有料老人ホーム」、「住宅型有料老人ホーム」、「健康型有料老人ホーム」という3つの種類に分類されています。
これらの施設は民間企業が運営する介護施設ですが、それぞれの形式に合わせて介護保険のサービスを組み入れていくことができます。
介護福祉施設とは異なり入居そのものについては介護保険は適応されませんが、施設に入居しながら受ける入浴や介助などの介護サービスを介護保険で受けるという形になります。
有料老人ホームは民間の介護施設の運営になるので、やはり入居にかかる金額や月額の費用も介護福祉施設よりも割高になります。
またそれぞれの施設によっても大きく金額は変わってきます。
費用の面を考えれば「有料老人ホームよりも介護福祉施設の特養の方がいいなあ・・」とほとんどの人は思うかもしれません。
ですが前述の通り、特養への入居は狭き門。
望んでも入居できないケースが多く、「今すぐ、できるだけ早く」というニーズには応えてもらえません。
ですのでこういった民間の有料老人ホームにも多くの方が利用し需要も多いのです。
運営は民間企業ですから営利の目的があることは否めなせんが、それぞれの施設での競争もあるので、よりしっかりしたサービスを提供する施設も増えています。
介護付き有料老人ホームは国から「特定施設入居者施設介護(特定施設)」の指定を受けた施設で「介護付き」「ケア付き」という表記が許されています。
有料老人ホームの約4割がこの介護付き有料老人ホームになります。
介護施設が入居する施設の中にあるので生活しながらさまざまな介護サービスを受けることができます。
どのようなサービスを受けるかは施設に常駐しているケアプランを作り、施設内の介護スタッフがサービスを提供します。
施設の中で受ける介護サービスの費用は、どのサービスを受けたからいくらかかるという加算式ではなく、定額になります。
要介護度によってその人に与えられた介護保険の範囲内でまかなえるようになっているので、どれだけサービスを受けても自己負担額はその1割です(所得によっては2割)。
※ただし、介護保険以上の手厚いサービスを望んだ場合はオプションとしてさらに費用がかかります。
入浴や食事、掃除、トイレなど基本的な介助はもちろん、重度の要介護状態でも対応が可能で、終の棲家として看取りまでケアしてくれる施設もあります。
以前は入居金で数千万という高額な高級ホテルのような施設が多かったようですが、特養などの公的福祉施設になかなか入居ができないという状況から、最近では介護福祉施設くらいの費用でも入居できる施設もたくさん増え一般的になりました。
入居資格は要支援1以上です。
【費用の目安】
入居時一時金(前払い金) | 月額費用(食費等を含む) |
---|---|
数十万〜数千万まで多様 |
約15万〜40万円 |
※要介護状態で1割負担の場合。食事代等の生活費用も含むおおよその概算。
有料老人ホームの約6割がこの住宅型に当たります。
こちらの施設の中では食事の提供や、掃除・洗濯などの生活援助が受けられます。
レクレーションなどもあります。
利用者が共同の住まいで暮らしている高齢者のための住宅施設という形式です。
介護サービスが必要な場合は外部の介護事業所から「居宅サービス(訪問サービス)」という形式でサービスを受けます。
ですが実際には、介護付き有料老人ホームと変わらない介護サービスを提供する施設もあります。
介護サービスは形式上は外部の介護施設から受けるとなっていますが、実際はその住宅型有料老人ホームの1階に介護事業所が併設されていて、全てのサービスを提供するという施設も多いのです。
これは各施設で大きく変わりますので入居を考える際には「住宅型なので対象外」ということではなくそれぞれに確認しておくと良いと思います。
本来は「住宅型」なのですが事実上は認可の問題というケースも多いということも知っておいていただければと思います。
介護付き有料老人ホームも特養などと同様に国の「特定施設」という認可を受けるため、総量規制などのより全国的に数が決められています。
ですので新しい施設などは基本的には住宅型という表記になりますが、提供する内容としては特定施設と同じようなサービスまで提供できる施設も実際には多いのです。
費用的にも介護付き有料老人ホームと同じくらいになりますが、こちらは定額制ではなく、受けたサービスの分だけ加算されていく形です。
介護保険の限度額をオーバーした場合は全額自己負担になりますので、どんなサービスをどのくらい受けるかはケアマネジャーと相談し、ケアプランに従って進められます。
【費用の目安】
入居時一時金(前払い金) | 月額費用(食費等を含む) |
---|---|
数十万〜数千万まで多様 |
約15万〜40万円 |
※要介護状態で1割負担の場合。食事代等の生活費用も含むおおよその概算。
健康型有料老人ホームとは名前の通りそれほど介護が必要ではない方(自立〜要支援2まで)が対象の施設です。
食事の提供や掃除、洗濯などの依頼ができます。
スポーツジムやスパなどの温泉施設があったり設備が充実していて生活を楽しめる工夫がされています。
軽度の介護が必要になった場合は居宅サービス(訪問介護)の依頼をし、施設に来てもらうという形式です。
ただし、要介護度が上がり重度の介護が必要になると退所をしなくてはならなくなります。
ずっと暮らせる施設ではありません。
また全体でも数は少なく有料老人ホームの中のわずか数パーセント(1%くらい)しか数がありません。
ですのであまり現実的に入居を考える施設ではないかもしれません。
【費用の目安】
入居時一時金(前払い金) | 月額費用(食費等を含む) |
---|---|
数十万〜数千万まで多様 |
約15万〜40万円 |
※要介護状態で1割負担の場合。食事代等の生活費用も含むおおよその概算。
高齢者向け住宅としてここでは2つをあげています。
「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」と「シニア向け分譲マンション」。
介護施設との違いは住宅として契約するということです。
ですので入居の際の一時金などはありません。
サ高住の場合は賃貸住宅としての契約料が(シニア向け分譲マンションの場合はマンションの購入代金)がかかります。
また施設ではなくあくまでも住宅ですので、自宅としての自由度は高くなっています。
サービス付き高齢者向け住宅は略称で「サ高住」と呼ばれます。
今とても増えている老人ホームの形式です。国の政策的のもこれからどんどん増えてくる傾向にあります。
特養は空きがない、有料老人ホームは費用が高くなりがちということで、このサ高住の需要が増えています。
しかし注意していただきたいのは、「サービス付き」という名称だけをみると介護サービスがついているの?と思われがちですが、ここでいうサービスは「安否確認(見守りサービス)」と「生活相談サービス」だけです。
介護サービスはケアプランに従い外部の介護事業所に依頼します。
サ高住は住宅という扱いですので訪問サービスだけではなくデイケアなどの通所サービスも併用して受けることが可能です。
食事の提供も別途のオプションサービスとして行っているところがほとんどです。
この場合は共有の食堂などで提供されています。
キッチンなどがあるタイプの場合は自分で自炊することも可能です。
外出なども自由にできます。
入居の対象は要介護認定を受けていない自立できる状態でも入居可能です(60歳以上の場合)。
ですので例えば夫婦のうち夫が要介護になり支援が必要だからということでまだ自立できる妻も一緒に入居するというようなこともできます。
スタッフも介護職員や看護職員の設置の義務はなく、見守りのためのケア職員が昼間に常駐だけで、夜間の常駐の義務もありません。
サービスは施設ではなく住宅であるという位置づけであることは理解しておくべきです。
ですが、こちらも現状は変わってきているようです。
施設ではないので本来ならばあまり介護の状態が重症な場合は退所しなければならないのですが、実際は要介護5の重度の方もそのまま受け入れてくれているところが多くなっています。
というのも、住宅型有料老人ホームのように、このサ高住にも介護事業所が隣接され一体型の施設のようなサービスを提供していることもあるからです。
ただし看取りまで行う施設はまだ少ないようです。
このようにサ高住はできるサービスの内容はかなり差が大きいので、サ高住を検討する場合はどこまでのサービスができるのか、どの状態まで受け入れが可能なのかは必ず確認しておきましょう。
費用は賃貸住宅に当たるの敷金がかかります。
月額費用も家賃のような費用でまかなうことができる施設が多くなっています。
サ高住急速に増えていることもありかなりサービスや施設に差が出るケースが多くなっていますので変な住宅を選んでしまわないようにしっかりと見極めることをおすすめします。
【費用の目安】
入居時一時金(前払い金) | 月額費用(食費等を含む) |
---|---|
敷金として家賃の2〜3ヶ月分 | 約10万〜30万円 |
※要介護状態で1割負担の場合。食事代等の生活費用も含むおおよその概算。
サ高住にはもうひとつ「介護型」というものもあります。
こちらは介護付き有料老人ホームのように「特定施設」としての指定を受けている施設です。
(これに対し前述のサ高住は「一般型」と呼ばれます)
こちらの介護型の場合は一般型とは大きく異なり、施設内でさまざまな介護サービスの提供を実施しています。
24時間スタッフも常駐し、食事提供や入浴の介助も受けられます。
重度の状態の方の受け入れ、看取りや認知症に対応しているところも多くあります。
ただし徹底した介護サービスが提供される分住宅としての自由度はなくなり管理体制の中での暮らしとなるので、まだ元気なうちには少し不自由な気持ちになるケースもあるかもしれません。
サ高住という分類ですが、内容的には介護付き有料老人ホームに近いものと思っておいた方がわかりやすいと思います。
介護サービスの費用は介護付き有料老人ホーと同様に月額の定額制です。
加算式ではないので1割(収入によっては2割)を自己負担すれば、何度でもサービスを受けることができます。
食事の提供も義務づけられていますが、この食事代は別途料金費用がかかります。
見回りサービスや施設利用料、賃料などと合わせると、有料老人ホームよりは安く一般型のサ高住よりは高くなります。
【費用の目安】
入居時一時金(前払い金) | 月額費用(食費等を含む) |
---|---|
数十万〜数千万 | 約15万〜40万円 |
※要介護状態で1割負担の場合。食事代等の生活費用も含むおおよその概算。
もうひとつの高齢者向け住宅は「シニア向け分譲マンション」です。
サ高住との違いとしては、サービス付き高齢者向け住宅は、高齢者住まい法に基づきバリアフリー面など設備の基準設けられており、行政に届出や登録をしなければサ高住を名乗ることはできません。
しかし、シニア向け分譲マンションの方は設備基準や届け出の義務がありません。基準というものは特にないのです。
ですのでシニア向け分譲マンションと言ってもそう名乗るのはある意味自由ではあるのですが、入居者を募るためさまざまな利便性を図った物件が登場しています。
介護事業所がテナントとしてビルに入っていたり、高齢者が暮らしやすいようにバリアフリーを徹底したり、運動ができる施設や趣味や楽しみを充実させる施設も完備したりなどいろいろな工夫をしています。
こちらは一般の分譲マンションと同様に売買契約で購入して入居します。
介護サービスが必要な場合はそのマンションを自宅として居宅サービスや訪問サービスをうけることになります。
このシニア向け分譲マンションの場合は親のために子供たちがというよりは、親本人たちが今までの自宅を売却して新しい老後の住まいへと転居を決めるというケースになると思います。
また介護度が進むとこのマンションで一人で暮らすというのもやはり難しくなるでしょう。
【費用の目安】
入居時一時金(前払い金) | 月額費用(食費等を含む) |
---|---|
数千万〜 | 約3万〜15万円 |
※食事や介護サービス費、生活費は別。
グループホームは地域密着型サービスの1つで、認知症対応型のサービスになります。
地域密着型サービスについてはこちらで解説しています
→【介護サービスの種類】-地域密着型サービス
認知症の高齢者を9人までを1つのユニットとし、少ない人数で家族のように共同生活をする施設です。
(1階、2階、3階に分かれそれぞれがユニットになっているというような施設もあります。)
施設の中ではリハビリテーション、レクレーションなどが行われ認知症の症状改善を目指します。
また食事や入浴などの生活支援もしっかり受けることができます。
市町村指定の事業者しか運営できません。
入居対象者は要支援2以上で認知症の診断を受けている必要があります。
また地域密着型サービスのですの住民票のある自治体の施設にしか申し込みはできません。
費用は比較的低費用です。
【費用の目安】
入居時一時金(前払い金) | 月額費用(食費等を含む) |
---|---|
0〜数十万 | 約15万〜20万円 |
※要介護状態で1割負担の場合。食事代等の生活費用も含むおおよその概算。
ケアハウスは少し特殊な施設です。
身寄りがない、家族の手助けが期待できないといった事情がある高齢者だけが入居ができ、助成金などによって費用がかなり抑えられています。
自立できる人や介護度低い人向けの「一般型」と介護が必要となる「特定施設」があります。
施設では食事の提供やレクレーションなどが提供されます。
一般型の場合はケアハウスは住まいの役割で居宅サービスや訪問サービスを頼んで介護サービスを利用していきます。
(特定施設の場合は特養や介護付き有料老人ホームのようなサービスと同様と考えて良いでしょう)
入居資格は60歳以上で家族の支援が受けられない人限定です。
【費用の目安】
入居時一時金(前払い金) | 月額費用(食費等を含む) |
---|---|
なし | 約8万〜15万円 |
※要介護状態で1割負担の場合。食事代等の生活費用も含むおおよその概算。
上記のように老人ホームには、公的な福祉施設、民間企業の運営する施設などさまざまなものがあります。
老人ホームへの入居を考えるようになったらどのようなステップを踏めば良いのでしょうか?
これは親が元気な場合と、介護度が進み緊急を要する場合では当然変わってくるでしょう。
ただどちらにしても私たちがまずしなければならないのは情報収集です。
グループホームなどの地域密着型サービスの場合は住民票のある自治体の中でしか選択範囲はないのでそこまで悩むこともないかもしれませんが、有料老人ホームやサ高住はどこからでも選ぶことができその質もサービスも費用も大きな差があります。
入居してから
「あまりサービスがよくない」
「なんとなくあわない」
となってしまっては一時金が高い施設などの場合は返金はあるにしろ大きな出費となります。
またお金の問題だけではなく、施設で暮らすのは親です。
私たちがいつもみていられるわけではありません。
親の認知労力が弱まっている場合などは、その老人ホームで何かがあっても私たちにはわからない可能性も高いのです。
老人ホームで起こる虐待などのさまざまなニュース、そんなことがもしかしたら身近に起こる可能性だって否定できません。
それにはとにかく調べること。
徹底的な情報収集が必須でしょう。
この情報収集はできれば緊急時になってからではなく親がまだ元気なうちからしておくべきだと思います。
地域にどんな老人ホームがあるのか、その違いは何か?
あまりにも緊急な事態になってしまってからでは十分な調査もできません。
おおよその知識だけでも入れておくことが望ましいと思います。
今はインターネットで老人ホームを探すことができます。
こちらは厚生労働省が運営している介護サービス情報検索サイト「介護サービス情報公表システム」です。
全国の介護サービス事業所・施設の情報が掲載されています。
特別養護老人ホームやグループホームなどの公的な福祉施設やサ高住などもこちらで検索ができます。
(ここをみると特養がいかに空いていないか、待機人数が多いかなどもよくわかります・・・)
公共のシステムですので正直なところすごく詳しく書いてあるというわけではないのですが・・・、地域にどんな介護事業所があるのかという情報などは全てわかります。
まずはこのサイトで検索して、リンクされている個別のホームページで詳しい内容を見てみるといいでしょう。
(ただし、個別のホームページがない事業所もまだまだ多いようです)
民間の老人ホーム検索サイトでは、公的な施設だけではなく有料老人ホームやシニア向け分譲マンションなどの情報も検索できます。
特養、グループホーム、ケアハウス、サ高住、介護付有料老人ホームなど、その地域にある老人ホームが同時に出てきますので比較がしやすくなっています。
厚生労働省の「介護サービス情報公表システム」は写真などがないためイメージがつかみにくいかもしれませんが、民間のサイトの場合は、施設の写真等もしっかり掲載されていてイメージがわかりやすいです。
各施設とも営業的な記載もあるので全てを鵜呑みにはできませんが、掲載されている情報はかなり詳しくなっているので、厚生労働省のサイトと合わせて使ってみるといいでしょう。
インターネットである程度情報が収集できたら、ケアマネジャーにも確認をしてみましょう。
離れた地域の情報まではわからないと思いますが、地域の施設の情報はケアマネジャーも詳しいでしょう。
特に特養や老健などの入居の相談はケアマネジャーに聞くのが一番です。
実際の空き状況や入所の条件なども確認ができます。
ただし、ケアマネジャーも独立型ではない場合はどこかの居宅事務所に所属しているため、他の施設に入所となるとその後はそのケアマネジャーとは契約が解除になってしまう可能性があります。
3つの介護福祉施設(特養・老健・療養病床)は各施設にケアマネジャーが在籍しているので入所後はそのケアマネジャーと契約することになりますし、介護付き有料老人ホームの場合も施設のケアマネが担当に変わります。
介護型サ高住も同様です。
住宅型有料老人ホームやサ高住(一般型)は外部の居宅サービスや訪問サービスを利用するので、原則は今までのケアマネジャーとの契約を続けることは可能ですが、入居する施設が居宅事務所をもった介護事業所の場合は必然的にやはりそこのケアマネジャーと契約することになるでしょう。
外部のケアマネジャーに頼むというのは規則上可能ですが、お互いにメリットは少なく不自然です。
というようなことからも、「この老人ホームはどうでしょうか?」と軽く質問してみるつもりでも、ケアマネジャーにとっては契約解除としての意味も含むため、少し聞きにくいということは意識しておいた方が良いでしょう。
ライバル事業所の老人ホームよりも自団体の老人ホームを推してくるということも当然のことだと思います。
ですので介護福祉施設などの施設介護以外の有料老人ホームの場合は、しっかり自分たちで情報を収集してから確認の意味で聞いてみるというスタンスでいった方が良いと思います。
有料老人ホームの場合はパンフレットなども充実してるので資料の請求を先にしてからじっくり検討できます。
ある程度の目安がついたら見学に行きましょう。
見学の申し込みをするとどこの施設も受付をしてくれるはずです。
とくに民間企業の施設の場合は営業もかねてしっかりと案内をしてくれるでしょう。
はじめの見学は(余程緊急ではない場合は)親と一緒ではなく自分たちだけで行った方が良いと思います。
資料やパンフレット、インターネットの情報が正しいかしっかり子供の目で確認してきましょう。
施設の見学は1件、2件ではなく、複数しっかりみるべきです。
介護度が進んでしまっている親を連れ回すのは負担も大きいですし、子供たちで見学し、さらに候補を絞りましょう。
最終的に候補が絞ぼり、「この中ならどこでも安心だな」というところだけになってから親を連れて行った方が失敗はありません。
終の棲家になるかもしれない施設です。
情報収集でヤリすぎることはありません。
とことん調べて親を任せることができる施設をしっかり選んでいきましょう。
具体的に入居を考えての探す時期はトイレに一人で行けなくなったり、自宅で入浴ができなくなったり時でしょうか?
もちろん介護する側の事情もあると思います。
認知症の進行も大きく影響するでしょう。
親と別居の場合で、片方が介護度が進み、もう片方が介護をしている場合などは、本当は介護が辛くても自分では言い出せない場合も多いと思います。
子供が親を預ける以上に長年連れ添った相手を施設に入れるというのはなかなか言い出せるものではありません。
しかしこれでは共倒れになってしまいます。
子供である私たちがしっかり状況を見ていくべきです。
また近くにどんな施設があるのかなどは親が元気なうちから知識として知っておきましょう。
徐々に進むだけではなく、病気などで急に介護が始めることもあります。
健康型有料老人ホームやサ高住、シニア向け分譲マンションなど介護が必要ではない状態でも入居ができる施設の場合は、さらに情報の収集は先になります。
今の家(親が住んでいる家)が高齢者にとって暮らしにくい場合などはリフォームするよりもメリットが大きいこともあります。
その場合は今の自宅を売却して住み替えということもあるでしょう。
親世代はこういう情報は全く知らずにそのまま不便な生活をしていることもあるので、このような情報を収集しておくのは早い時期でも良いと思います。
見学などはもっと具体的になってからでいいですが、資料やパンフレットでイメージを掴んでおくといいかもしれません。
そのためにも親が元気なうちに、「介護が必要になった将来はどうしたいのか?」ということを聞いておきたいものです。